伝統的なヨガの呼吸法は普段から田畑を耕したり、元々しっかり体を動かしている人ならすぐに習得できるかもしれません。
しかし、現代の私たちは便利な生活をしているがゆえにあまり体を動かしておらず、呼吸筋がカチカチになっています。
つまり、体を使って作業をしながら呼吸を深める機会があまりないと考えられます。
それゆえに、一番大きな呼吸筋である横隔膜が肺の下部に張り付いて肺を押し上げ、上下に柔らかく動くことが困難になっています。
しかも、子供の頃からゲームばかりしている若い世代は横隔膜が通常の半分くらいの薄さになっていてほとんど動けなくなっているようです。
これがなぜ問題なのかというと、ちょっとのストレスでもあっという間に横隔膜が緊張して、すぐにパニックになってしまうからです。
一度張り付いた横隔膜はなかなか弛まないので強いお薬がたびたび必要になるのかもしれません。
横隔膜が動かないということは呼吸がうまくできないことと直結しています。
しかも、私たちの胃の裏側には太陽神経叢といわれる太陽のような形をした自律神経のコントローラーのようなものがあり、これが唯一呼吸により自律神経をコントロールできる場所と言われています。
丹田呼吸法ではこの横隔膜を柔らかく上下させて、太陽神経叢を活性化し、緊張ゆえにできる腹部の硬結を緩めて、自力で自律神経をコントロールできるように導くことができます。
浅い呼吸によりできた腹部の硬結は異常緊張をもたらし、ノイローゼや深刻な疾患、自律神経失調症の大きな原因になっているということが医療でもわかってきました。
以前から調和道の講師が拘置所に服役中の囚人に向けて丹田呼吸法をお伝えしてきました。
その結果、真面目に丹田呼吸法を練習した人は早く服役を終えることができ、しかも2度と拘置所に戻ることはないそうです。
しかし、真面目に丹田呼吸法をやらない人は服役終了後間も無くしてまた拘置所に戻ってくるそうです。
この話からもわかるように、いかに呼吸が私たちの体と心に影響を与えてきたかということです。
たがが呼吸、されど呼吸。
生まれて一度も忘れたことがない呼吸ですが、実は一番大きな鍵を握っているということなんですね。